1. 設備管理の平均年収
厚生労働省と職業情報サイト「job tag」によると、設備管理（ビル施設管理）の平均年収は約458万円（2025年時点）で、日本の平均年収（約460万円）とほぼ同水準です。 年齢・経験により月収が増加し、15年以上のキャリアで月30万円以上、年収370万円～380万円程度に至る例もあります。
2. 電気工事士の平均年収
国家資格「電気工事士（第二種・第一種）」有資格者の平均年収は、おおむね400万〜550万円前後です。 転職情報では全国平均約419万円、東京都では468万円と、都市部での年収は高めです。資格のランク別に見ると以下のような傾向があります。
- 第二種電気工事士：求人層・リフォーム現場などで活躍（平均400〜500万円）
- 第一種電気工事士：より高い業務対応力に応じて平均で約560万円。1級施工管理技士持ちなどは600万円を超えるケースもあります。
3. 要因別に見る給与差の理由
年収には地域、経験、資格、勤務形態による差があります。 都市部では平均年収が高く、施工管理の資格や現場主任職への昇進によって収入アップが可能です。 また、独立して一人親方として活動することで、700万円以上の収入を得ている人もいます。
4. 今後の展望と需要動向
日本国内において、電気工事士の将来性は極めて高く、安定した職業としてだけでなく、成長分野の専門技術者としての価値が飛躍的に高まる状況が続いています。
人材不足・高齢化の深刻化
電気工事士の高齢化が進み、2022年時点で35％が55歳以上、29歳以下はわずか11％に過ぎず、需給ギャップが顕著です。 今後、第一種で約2万人、第二種で2045年には約0.3万人の不足が見込まれています。 工業高校の減少や離職率の高さも人材育成の課題となっています。
市場規模の拡大と産業構造の変化
電気工事業界全体の市場規模は2024年度で約7兆円、2030年には8.5兆円に拡大すると予測されます。 智能都市構想、5G整備、再エネ需要によって施工需要が加速しています。
成長分野と新たな技術領域
再生可能エネルギー関連では太陽光やEV充電設備の設置が増加。 スマートシティやIoT対応では、通信インフラ、防犯設備、センサー設置工事などの専門性が求められています。
安定性と変化の両輪
ビル設備管理や保全分野でもDX化が進み、遠隔監視や清掃ロボット、予知保全の導入が進んでいます。 IT・AIに対応できる技術者へのニーズが拡大中です。
給与・キャリアへの期待上昇
慢性的な人材不足から求人倍率は高水準で、給与も年々上昇傾向にあります。 資格取得支援やキャリア育成制度の整備が進んでおり、若手にも好機です。
総括：これからの成長領域と求められる人材像
- 若手・未経験者にとってのチャンス：教育支援が充実し、スタートしやすい環境が整っています。
- 成長分野への対応がカギ：再エネ、IoT、通信インフラなど新技術分野に強みを持つ人材が評価されます。
- 保全業務のDX対応力：AI・データ活用などを理解し、導入・運用できる人材が今後の核になります。
今後10年で電気工事士の需要は一層拡大し、技術力と柔軟な対応力を備えた人材が求められる時代です。 継続的な学習と資格取得が、高収入と安定したキャリアにつながる鍵となるでしょう。
5. 将来のキャリア戦略と収入アップのポイント
| 手段 | 内容 |
|---|---|
| 昇進と管理職登用 | 現場主任や施工管理職などへ昇進すれば、役職手当や基本給増で年収12〜36万円程度増加が可能です。 |
| 資格取得 | 第二種 → 第一種 → 1級施工管理技士など上位資格取得により、業務範囲と報酬が広がります。 |
| 新技術スキルの習得 | IoT機器、防犯設備、再エネ設備、AI監視など先進業務に対応できるスキルを磨くことで市場価値が向上します。 |
| 独立／フリーランス | 営業や施工受注力があれば、年収700〜1,000万円超の独立成功例も一定数存在します。社会保険や営業対応の責任は伴います。 |
結び：今から目指す魅力ある領域
電気工事士や設備管理といったインフラ技術職は、今後の日本社会においてますます重要な役割を担っていく職種です。少子高齢化により、技術者の数は年々減少しており、それに伴い現場での人材確保が難しくなっています。一方で、社会インフラの老朽化や省エネ化の要請、再生可能エネルギーやスマートシティといった新しい技術分野の発展によって、専門的な知識と技術を持つ人材のニーズは右肩上がりです。
特に電気工事士の仕事は、住宅の電気配線だけにとどまらず、太陽光発電、EV（電気自動車）用充電器の設置、IoT機器の導入サポート、さらには産業施設や大型商業施設の電力インフラ整備まで多岐にわたります。これにより、一つの資格で幅広いフィールドに挑戦でき、経験を積むごとに年収も上がりやすい構造になっています。
また、設備管理の領域でも、建物の維持管理だけでなく、ITやセンサー技術を活用した「スマートメンテナンス」が主流になりつつあります。異常の予兆をデータで検知する「予知保全」や、クラウド上で一元管理する「遠隔監視システム」の導入が加速しており、ITスキルと現場経験を併せ持つ人材が特に重宝されています。
このような背景から、これらの職種は「安定性」と「成長性」の両面を兼ね備えた非常に魅力的なキャリアと言えます。たとえば、第二種電気工事士を取得して現場経験を積み、第一種へステップアップした上で施工管理技士や主任技術者資格を取得すれば、年収700万〜1000万円超も十分現実的です。さらに、独立して法人化することで、複数案件を同時に請け負い、経営者としての道を進むことも可能です。
加えて、国家資格という信頼性の高さから、一度スキルと実績を積めば、転職・再就職にも強く、年齢に左右されにくい職種でもあります。40代、50代でのキャリアチェンジも珍しくなく、若年層だけでなくミドル・シニア世代にとっても「今からでも目指せる」数少ない専門職の一つです。
「手に職をつけたい」「安定した職を求めたい」「将来性のある業界に入りたい」——こうした思いを持つ人にとって、電気工事士・設備管理の道はまさに理想的な選択肢です。学歴や過去の経歴に左右されず、努力次第で確実に成長できる環境がここにはあります。
これからの時代において、電気という社会インフラの根幹を支えるプロフェッショナルになることは、自分の生活の安定だけでなく、社会貢献という意味でも非常に意義のあるキャリアです。未来の日本を支える“縁の下の力持ち”として、今こそ一歩を踏み出す価値のある領域だと言えるでしょう。
